オースチン日本語補習授業校 特別授業
日時: 2010年2月20日 午後12時15分~1時
場所: O. Henry Middle School カフェテリア




  私たちはよく、となりの花子ちゃんはいつも漢字テストができて頭がいいとか、うちの犬は頭が悪くてなかなか「お手」を覚えないとか言いますが、いったい、頭がいいとか悪いとかいうのは、どういうことなんでしょう?

こんな問いに対する答えの手がかりを与えてくれたのが、今から100年ほど前にロシアの生理学者、イワン・パブロフが行った「パブロフの犬」の実験です。

今回は、「パブロフの犬」の頭の中、つまり「脳」で起こっていることを、最新の脳科学の知見を交えながら、わかりやすく話してみたいと思います。



 2月20日の放課後、テキサス大学准教授の森川先生をお迎えして、「アタマがよくなるおはなし」と題した特別授業をしていただきました。

 補習校の小中学部の児童・生徒全員、先生、希望する幼稚園児と保護者がカフェテリアに集まり、大きなスクリーンを前に着席しました。

 脳の話といえば、かの有名なパブロフの犬の実験。舞台のスクリーンの上には、かわいい犬のアニメーション。犬が「はー???」ととぼけた顔をするところ では、みんな大笑い。リモコンのボタンで、面白いサウンドのおまけもついて、子ども達は一気に先生のペースに引き込まれました。

 ニューロンの話では”ニューロントランスミッター”とかいう難しい言葉が出てきて、少し高度でしたが、「ニューロン”はなこ”」と「ニューロン”タ ロー”」が登場。子ども達からまたまた笑いが起こります。難しいメカニズムを分かりやすく説明してくださいます。

 人間はニューロンを100,000,000,000個持っていて、年を取るとともに減って行く。ニューロンを一番たくさん持っているのは赤ちゃんなのだそうです。

 頭がよくなる鍵は「ドーパミン」。「ドーパミン」がたくさん出ると、勉強ができるようになるし、スポーツも上手になる。なんと、ゲームも上手にしてくれる!!


 パブロフの犬の実験で、ベルを鳴らしてから犬にえさを与えることを繰り返すと、ベルの音を聞いただけで犬がよだれを出すようになるというのは、有名ですが、これにはその先がありました。

 えさを与えてからベルを鳴らすとどうなるか?ベルとえさを同時に与えるとどうなるか?予想もしていなかった質問に、みんな頭をひねります。

 答えは―― どちらの場合も、ベルを鳴らすだけで犬はよだれを鳴らすようにはならない!!つまりは、褒美は後でなければならないのでした。保護者の皆様、「ご褒美は、勉強してから」ですよ。


 脳の研究が、脳の病気を治したり、ロボットを作ったりすりことに役立つのは、予想できることでしたが、頭のよくなる薬も夢ではないというのは、脳研究者 ならではの奇抜な発想ではないでしょうか。スポーツの選手が薬を使って記録を伸ばすように、頭の薬を使ってカンニングする時代がくる?!テストを受けるの に薬物検査を受ける時代が!未知の世界は面白いです。

 短い時間でしたが、「へえー」と驚くような新しいことをたくさん学びました。きっと、みんなの頭も少しよくなったことと思います。


 昔からよく言われる「よくあそび、よくまなべ!」は真実で、運動すると頭がよくなる」のです。ところが、実は、「遊ぶ」と「頭がよくなる」の間に、「勉 強をする」が必要です。遊ぶと脳の働きが活発になり、その脳を使って勉強をすると頭がよくなるのです。やっぱり、No Pain No Gainなのだと、少しがっかり。

 最後に、校長先生からご挨拶があり、校長先生が少し疲れ気味の森川先生の前を元気に走っていらっしゃる写真の裏話を公開されました。実は、先週、森川先 生がオースチンで開かれたマラソン大会に参加されて、応援にいらした校長先生が、もう、ずいぶん走ってこられた森川先生の横を走りながら、今日も特別授業 の確認をされていたという写真でした。

 森川先生は、その日、フルマラソンを見事完走されました。まさに、「よくあそび、よくまなべ!」を実行されていて、これからのご活躍が期待されます。


森川 均(ひとし)氏 プロフィール

1965年、スリランカ(当時のセイロン)で生まれる。その後、2歳で日本に渡り、5歳から3年 間、テキサス州ヒューストンで過ごした後、9歳頃、神奈川県鎌倉市に落ち着く。地元の湘南高校を卒業後、1983年、京都大学医学部入学。大学卒業後、無 事、麻酔医となるが、次第に脳に対する薬物の作用メカニズムに興味を覚えるようになる。麻酔科学の博士号を取得後、1999年、京大病院を休職し、オレゴ ン州ヴォラム研究所に3年間、研究留学。この間、 遅まきながら脳科学者として生きて行くことを決意。2002年よりテキサス大学神経生物学科助教授、2008年より准教授。専門は、依存性薬物の脳作用、 及び脳の学習メカニズム。