2010年度 若田光一氏 講演会

オースチン日本語補習授業校 創立10周年記念特別講演会

日時: 2011年1月22日 午後12時15分~1時15分

場所: O. Henry Middle School カフェテリア

「国際宇宙ステーション 長期滞在に参加して」

1月22日の放課後、日本人宇宙飛行士若田光一氏をお迎えして「国際宇宙ステーション 長期滞在に参加して」と題した講演会をしていただきました。

補習校の小中学部の児童・生徒全員、先生、希望する幼稚園児と保護者がカフェテリアに集まり、大きなスクリーンを前に着席しました。

また、今年度は、オースチン日本語補習授業校創立10周年記念行事ということで、学校以外の日本人コミュニティーの方もお招きしました。

おなじみの青い宇宙飛行士のユニフォームで登場した若田氏は、思ったより小柄で、とても普通のおじさんに見えましたが、宇宙の話になると頭の中にはどんなことが詰まっているのだろうと思わせる『普通』とは程遠いお話しが始まりました。

JAXAは日本のNASAという紹介から始まり、早速、国際宇宙ステーションにある日本実験棟「きぼう」について説明していただきました。

宇宙ステーションは万有引力で落ちているのと同時にすごいスピードで前に進んでいるので、決して、地球に落ちてこない。??宇宙ステーションの中では、ものがふわふわ浮いている。すなわち「無重量環境」--ん~難しい!

地球をDVD、月をゴルフボール、火星をテニスボール、太陽は直径14メートルの水タンクにたとえ、それらの位置関係を説明してくださいました。こちらは分かりやすかったです。

宇宙ステーションは地球のとても近くを飛んでいるため、地球の全景は見えないが、オーロラやエジプトのピラミッドなどはよく見えるそうです。また、空港 は見えるが、万里の長城のように地形に沿っているものは見えない。夜は、都市の明かりがよく見えると、宇宙からならではの景色、いろいろな写真を見せてく ださいました。

宇宙ステーションにはアメリカ、ヨーロッパ、日本等15ヶ国が参加し、いろいろな実験を行っています。日本人現役宇宙飛行士9名で、宇宙ステーションの長期滞在はこれまでに2回。

若田氏の長期滞在は、2009年3月15日から7月31日までの4ヵ月半。出発から帰還までのビデオを見せてくださいました。

スペースシャトルの発射から8分半でもう宇宙。無重力状態に。さすが訓練を受けた宇宙飛行士、すっかりリラックスした笑顔です。2日かかってで宇宙ステーションに到着。

《宇宙面白実験》

2人でハイタッチや腕相撲。水鉄砲を発射すると・・、LED付きのこまの動き。静電気で水の玉を引っ張りあげる。などなど。

1人野球 ー 自分が投げたボールがとてもゆっくり進むため、自分が先回りし自分の投げた球を打つことができるーこのビデオには、みんな爆笑でした。

《宇宙での生活》

無重力のため骨がもろくなるので、毎日2時間運動が課せられます。運動にも工夫が必要で、体が浮かないようにばねで引っ張ったりと、いろいろな器具があります。

もちろんお風呂もNG。タオルで体を拭うことしかできません。寝るのは?というと、寝袋に入ってふわふわ浮いた状態で寝るのだそうですが、なかなか気持ちがいいそうです。

食事は、日本食28種類を持参。白いご飯やさばの味噌煮が他の外国人宇宙飛行士にも大人気。

水の供給装置によって、自分のおしっこを再生した水をおいしそうに飲む様子には、会場の子供たちが、「エー」「イー」と驚きの声。若田氏は「おいしいですよ」を何度も繰り返され、その度に、子供たちから笑いが起こりました。

宇宙でちゃんと運動していたので、帰還された時も、出発したときとそれほど変らず平気だったそうです。

最後は、質問の時間です。待っていましたとばかりにたくさんの子供たちから手があがります。

低学年の子供からは、「宇宙は、怖かったですか。」

「怖い。一緒に仕事していた仲間がスペースシャトルコロンビアで亡くなったこともあったから。でも、いざ宇宙に行く時は、世界中の人の役に立つため、怖いより頑張ろうという気持ちになる。」

高学年の生徒からは、「宇宙で、病気になったらどうするんですか。」

「宇宙に行く前にウイルス性の病気に関しては、検疫をするために隔離所で生活する。もしも、盲腸など、どうしても緊急の処置が必要になったら、ロシアのソユーズで地球に帰る。宇宙ステーションからは、4時間で帰ってこれる。」

その他、「宇宙ステーションで物をなくしたら、下に落ちていないので、探すのが大変。最終的には、エアコンのフィルターのところに行くのだが、時間がかか るので不便。」「サッカーのオーバーヘッドキックは、ボールが止まっているので、地球でやるよりよほど簡単にできる。」

など、思っても見ないけれど、聞いたら納得という話がたくさんありました。

プロフィール

埼玉県出身。九州大学大学院工学部航空宇宙工学専攻博士課程修了。博士(工学)。1992年2月宇宙飛行士候補に選ばれる。同年8月、米国航空宇宙局(NASA)が実施する第14期宇宙飛行士訓練コース参加。1996年1月STS-72ミッションに日本人初のMSとして搭乗。1993年8月NASAよりミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者:MS)として認定。2009年3月~7月日本人として初めてISS長期滞在ミッションを実施。2010年4月JAXA宇宙飛行士グループ長就任。

宇宙滞在および航空機飛行時間: 1996年、2000年、2009年の3回の宇宙飛行での宇宙総滞在時間は159日10時間46分。航空機総飛行時間2600時間以上。

http://iss.jaxa.jp/astro/wakata/より抜粋